セコライフ! - 障害福祉と音楽と何かと -

障害福祉の業界で働くぼくが考える医療福祉論から仕事の枠を超えた活動や好きな音楽まで幅広く発信。

第13回「脱・施設から築・地域へ! NPO法人「月と風と」が目指す半径2キロの“混浴社会”!? ~第1話~」

ども!世古口です。

超好きな人「清田」、超リスペクトな法人「月と風と」に取材を行いました。その記事を更新いたします。

 

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「友達ほしい。」「バイトしたい。」「結婚したい。」「好きな子にチョコあげたい。」。どこにでも落っこちていそうな“THEつぶやき”。あなたもついこんなことを呟いたことはありませんか?これ実は、兵庫県尼崎市障害福祉サービスを行うNPO法人月と風とを運営している清田さんが、実際に聞いた“障害者”のつぶやきなのです。

 

若いとか年をとっているとか、カッコいいとかカッコ悪いとか、障害があるとか無いとか、そんなことは置いといて。どうしようもない“ただの人”として、目の前のあなたのつぶやきをちゃんと聞いてくれる人がいる社会っていいなと思いませんか。「障害福祉」の枠を「障害者」と一緒にヒョイと飛び越え、孤立をなくす地域づくりまで見据えてしまっている、そんな“NPO”。月と風との代表の清田さんが目指す“混浴社会”について聞きました。

 

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NPO法人月と風と…オモシロ可笑しく、時に真面目に。「共生のまちづくり」を目指して、尼崎市にて平成18年~重度心身障害者の地域生活を支えるヘルパー派遣事業を実施。障害者と地域社会との接点をつくり、地域から孤独を無くす「ヒトリボッチジャナイプロジェクト」に邁進中!
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■障害が一番重い人こそ地域に!

兵庫県尼崎市のJR園田駅から徒歩10分、NPO法人月と風と(以下、月風)の小さいけどひときわ目を引く存在感の大きなカラフルな事務所があります。アート作品が飾られ、主張たっぷり!の外見からは、まさかここが福祉の事業所だとは想像がつかないかも。

月風は主に重度心身障害者へのヘルパー派遣を行っている、いわゆる障害福祉サービスの事業所で、利用者の多くは、コミュニケーションが難しかったり、胃ろうや痰の吸引、人工呼吸器の管理など、医療的ケアの必要な人が多いのが特徴。ケアが難しい重度の障害者を率先して受け入れてきたのは、「障害が一番重い人が地域にいたほうが、みんなが暮らしやすい世界になる。」という代表の清田さんのポリシーから。平成18年からこの尼崎の地で重度の障害をお持ちの方の在宅生活を支えるヘルパー派遣事業を行っています。またその一方で、世の中の社会問題のほとんどの原因となっている孤独をなくそうという「ヒトリボッチジャナイプロジェクト」をもう一つの軸として取り組んでいます。

 

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■地域から“孤独”をなくすーヒトリボッチジャナイプロジェクトー
ヒトリボッチジャナイプロジェクトは、①「アートプロジェクト」②「お風呂プロジェクト」③「地域づくりプロジェクト」④「ヘルパー育成プロジェクト」の4つに分かれています。その取り組みはどれも「そうきたか!」と言いたくなるようなユニークなものばかり。例えば、古着屋さんとコラボして障がいのお持ち方と一緒にファッションショーをしてみたり、事務所でカルチャースクール的なものを開いてみたり(その名も「軽茶堂(かるちゃどう)」)。どれも入り口には「福祉」だとか「介護」というイメージを作らず、「なんか面白そうやん。」から入って、そこに自然と障害のある人との出会いがあるように作られています。
どのプロジェクトも清田さん曰く「知り合いの多い人生は幸せな人生!」と言う考えのもと、障害のある方と地域社会との接点をつくる取り組みとして運営されています。

 

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(第2話へ続く!)

第12回「2017年の振り返り」

みなさま、旧年中はお世話になりました。本年もよろしくお願いします。2018年のことは、また度。2017年のことを振り返ります。色々あったなぁ。今年は月4度ブログ書きます宣言。

 

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1月。
・リタリコと北欧視察報告会を共同開催。 
・退職するかどうか悩む。

2月。
・放課後等デイサービス/就労継続支援事業所の見学を順次行う。
・「アントキスイッチ」始動。小規模な場づくりを行う。 
・少し講演の依頼があった。65歳以上の方々に対し障害者福祉をお伝えする「高齢者講座」、石川県の大学生の方々に対しぼくの働き方をお伝えする「Amazing Fukushi Festival」。

3月。
・みつわ福祉会にて学習会を担当。 
・WellCON大阪、開催。
・様々なプロジェクトの打合せに呼ばれる。感謝。
・退職を決意する。

4月。
・Ubdobe支部長研修。統括、退任。
・千葉県船橋の中華屋「桃竜門」のおばちゃんと仲良くなる。厚労省の人とも仲良くなる。
・JAMMIN訪問。可能性を感じる素敵な出会い。

5月。
・気になった障害福祉の事業所の見学を行ける限り行く。
・たくさんの気になった人と会ってお話をする。

6月。
・WellCON京都、開催。
三重県の農福連携事業を見学。
・即興ギターの演奏。「その場」の面白さに取りつかれる。
NPO法人サポネ、退職。約8年間。サポネのみなさまに感謝。

7月。
・東京に長期出張。障害者雇用×花屋の「LORANS.」で1ヶ月半修行。
・「Little Japan」に長期宿泊。居心地の良さが高く、LORANS.とLittle Japanの行き来しかしていない。 
・WellCON奈良、開催。 

8月。
・東京長期出張を終え、あそか苑で働く。 
・「みんなのサマーセミナー」で先生体験。 
・ローンチパートナーズのご依頼で講演。
・「ミーツザ福祉」がようやく自分ごとに。
・ぷろぼの/無限を中心としたパーティー。可能性しか感じない時間。 

9月。
・サビ管研修が開始。12月まで続く。
富山県での「地域共生フォーラム」参加。これまでの経験からの考えが間違っていないことに気付く素敵な時間。
・BYE MY BARRIER FES、開催。新しい団体の立ち上げ構想が出来上がる。

10月。
・「ミーツザ福祉」の打合せと準備が大詰めに。
滋賀県での「居場所ネットワークフォーラム」に参加。素敵なことをインプット。

11月。
・Ubdobe関西支部、解散。Ubdobeのみなさま、関西支部のみなさまに本当に感謝。
関学での授業。素晴らしい経験。伝えることの難しさを痛感。
・「ミーツザ福祉」開催。関わった10ヶ月間がとても濃厚。 
・「ポジ祭」開催。例年通り、運動会の運営。久し振りの方々と再会する素敵な時間。 

12月。
PSWの講座を担当。 
・師匠と出会う。仕事が面白くなり、可能性と幅がひろがった。
・KAIGO JINGERを思いつきで始める。これからの仕組み作りが楽しみ。
・バババ設立宣言。名称に顰蹙を買う。スネる。関西支部のみなさん、これからもよろしくお願いします。

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2017年は、たくさんの人とたくさんのことをしてきました。みなさまに感謝です。これからもよろしくお願いします。2018年のことは、また今度。

第11回「福祉ってやつ?」

Sekoです。最近全然更新していない。反省。
さて、今回は最近関わっているプロジェクトについて書きます。
 
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■■ミーツ・ザ・福祉プロジェクト
 
5月17日と21日の2日間(内容は同じ)、尼崎市で長年にわたって行われてきた「市民福祉のつどい」についてみんなで考えてみよう!というワークショップ「ミーツ・ザ・福祉」を開催します。
 
先日「ミーツ・ザ・福祉」の打合せで、耳の聞こえない人と聞こえる人が同じチームを組み、対話を含んだワークショップをするにはどのような配慮が必要かどうかを議論し、アイディアを出し、そのアイディアをその場で実験しました。難しい。納得のいくシステムになかなか行き着くことができない。
 
参加者対講演者の対面型であれば、ステージ横に手話通訳者を置いたり、要約筆記を映し出したりするのが一般的ですが、ワークショップでの配慮となると別の工夫が必要です。対話が飛び交うワークショップの場において、耳の聞こえない人が置いてけぼりにされず、みんなが対話に参加し、場を共有できる工夫を。
 
1つのシステムを生み出し、ロールプレイし、あれやこれやと振り返り、システムを修正していく。そのプロセスが「福祉にミーツしている!」し、障害のある人とない人が一緒のグループでワークショップをし、話し合うことが「福祉にミーツしている」ことになるし、その先の「福祉をシンクする」ことの気付きになるし、「福祉が身近に」の第一歩になりえます。
 
■■みんなを意識すると、なんかぼやけてしまう
 
同じ時間を共有している全員が完璧な快を得られるなんてできない。1人ひとり心地よさを感じるポイントは違う。誰かの快は誰かの不快で、誰かの不快は誰かの快。ほどほどの快をみんなが享受するのが僕は好きだなぁ。Aさんの不快をどうすれば心地良くできるか、Bさんの困りごとをどうすれば解決できるかを考えていく繰り返しが集合体となり、みんなを形成していく。特定の個を抜きで、みんなだけを意識したらぼやけてしまうから。ミーツ・ザ・福祉プロジェクトを通じて、概念や考え、常識をRE:捉えしています。ああ、素敵な場。
 
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日常の1コマを丁寧に切り取り、ブログに残していこう。無理なく。

第10回「友達、ともだち、TOMODACHI」

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ども、Sekoです!
岡本太郎のエッセイを読み、価値観のスライドを強制され、やる気だけみなぎっています。
 
僕はいまの仕事に就くまで、障害者とどう接したらいいかわかりませんでした。
 
就職活動に軒並み失敗し、自暴自棄に陥ったぼくは、何となく福祉の仕事を探し、何となく障害分野を選び、何となくいま働いている法人をリクルートサイトで見つけ、何となく説明会に参加しました。その説明会でお聞きした理念や活動に共感したのと、実習で出会った脳性マヒのおっちゃんが大好きになったのと、親の会社に就職したくなかったという理由で、いまの法人で働くことになりました。
 
働き出して数日後、重度といわれている知的障害の人と一緒に10間くらい外出するおしごとをしました。彼の意思と実際の行動の相違を表現する彼の方法は「痰を吐くこと・叫び声を出すこと・自分の頭を叩くこと」が中心で、自分の常識をはるかに超えた状況を体験しました。カルチャーショックを感じたし、このおしごとに就いたことを少し後悔しました。マジヤッテイケルノカボク、と。
 
その数日後、気管切開をし、人工呼吸器を使用しながら1人暮らしをしている人の入浴介護をしました。入浴の際は手動式人工呼吸器(アンビューバック)に付け替え、1人がアンビューバックを押しつつ上半身を抱え、もう1人は下半身を抱え、入浴用ストレッチャーに移乗し、1人がアンビューバックを押し、もう1人は身体を洗っていきます。これもびっくりしたし、少しのミスが生命の危機にかかってくるという怖さを猛烈に感じたのを覚えています。マジヤッテイケルノカボク、と。
 
最初はやっぱり障害者とどう接したらいいかわかりませんでした。
 
でも数日、数ヶ月、数年と重ねるごとに、たくさんの障害者と出会い、知り合い、過ごし、仲良くなっていきました。
 
そういうプロセスを経ることで、少しずつ障害者とどう接したらいいかわかってきました。
 
障害のことを知らない→知っている
障害者のことなんて関係ない→関係がある
僕の生活において障害者を意識しない→意識する

そして、障害なんか全く関係なくなるくらい、1人の障害者と個人と個人の付き合いをし、友達になったことで、障害者とどう接したらいいかわかるようになりました。っていったらおこがましいし、(差別的になっちゃうけど)障害があるけど障害を意識しなくなるというか。障害関係なしに、好きな人だから仲良くなる、苦手な人だから仲良くならない、そんな関係性を築けるようになりました。

バリアフリーユニバーサルデザインの推進普及方策に関する調査研究 - II バリアフリー化推進に関する国民意識調査について」という文献に載っていましたが、高齢者・障害者を手助けしない理由のほとんどが「かえって相手の迷惑になると思う」と「手助けしても対応方法が分からない」でした。これは接する機会がない、知る機会がないからなんじゃないかな。
 
障害者のことを知らない→知っている
障害者のことなんて関係ない→関係がある
生活のなかで障害者を意識しない→意識する

上記の意識転換が自然とできるイベントが3/20()に横浜で開催します。その名も「WellCON2.0」!お酒飲んで、ピヤピヤし楽しみながら、価値観のスライドを体感してください!

 

--WellCON2.0詳細--

テーマ :

「集まれ!FanFunFan 

 

FBイベントページ

https://www.facebook.com/events/215124872293496/

 

日時:2017320(月・祝)
OPEN
14:00受付開始 START14:30 CLOSE17:30

 

会場:Bukatsudo
http://bukatsu-do.jp/
横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号 ランドマークプラザ 地下1階
みなとみらい線「みなとみらい」駅徒歩3分、JR市営地下鉄「桜木町」駅徒歩5分

 

トークゲスト:(50音順)
*赤荻 聡子
心臓病の子どもと家族の集い「こぐまハートクラブ」代表
「横浜こぐま園」副代表
8
歳と4歳の娘の母
次女が重度の心臓病、左心低形成症候群

 

*加藤 さくら
こころのバリアフリーリエータ
(講演会、講座、執筆活動、商品開発、バリアフリー事業)
患者家族会『ふくやまっこ家族の会』の立ち上げスタッフ
日本メンタルヘルス協会 心理カウンセラー
親業訓練協会 公認インストラクター
著書:えがおの宝物』(光文社)
出演: 24時間テレビ愛は地球を救う『おひるねアートでひと夏の大冒険』、ドキュメンタリー映画えがおのローソク』
夫、9歳と6歳の娘の4人家族
次女が福山型先天性筋ジストロフィー

 

*佐藤 まゆ子
慢性疲労症候群患者、患者支援団体 Action for ME/CFS Japan 共同代表
出演:TV東京 ザ・ドキュメンタリー「難病女子の闘い」

 

■MC:金井 敦司(NPO法人Ubdobe 関東副支部)

 

定員:80名(要予約)

 

参加費: 3,000円(FOOD & DRINK付)
学生割引:受付にて学生証提示で500OFF
学割をご希望の方は、ご予約の際にお申し出ください。

 

お申し込みはこちら
<予約受付メール>  kanto@ubdobe.jp 
件名:Well CON 横浜
本文:
お名前
ご職業(例:特養で介護ヘルパー/循環器科で看護師/◯◯福祉専門学校)
ご連絡先(TEL / MAIL
上記内容をご記入の上、予約受付メールアドレスに送信してください。

 

主催:NPO法人Ubdobeウブドベ)
 

 

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最後まで読んでくれたあなた、本当にありがとうございます!

僕が影響を受けた言葉を1つ紹介し、ブログを終わりたいと思います。

 

「いますぐハードを変えられなくても、ハートはすぐに変えられます」

垣内 俊哉/株式会社ミライロ 代表取締役社長
 
この言葉を常に胸に持ちつつ、心のバリアフリーを発信しています!あとは実践。困ってそうな人がまちなかにいたら「May I help you?」と言っています!

第9回「だから、もっと福祉の外へ」

ども、Sekoです!

 

井の中の蛙になってはいけない。もっと福祉の外側へ発信しなければいけない」と実感した出来事が最近ありました。

梅田のグランフロントにある、異業種が集まる登録制サロンの利用面接に先日行ってきました。面接では、僕が働く法人の事業内容や理念、僕が考える障害福祉観や仕事以外の活動について幅広く質問されました。法人のことを聞かれたときに、僕はいつものように、障害者支援を通して、豊中市を障害者が暮らしやすい地域にしていくのと同時に、あらゆる人の「らしさ」があふれる社会にしていく活動をしています、という回答を皮切りに、事業内容や理念をお伝えしました。

僕の説明に対して面接官は言いました。
「社会へ/地域へ/外へ、障害者を全員出していくのはよく分からない。障害者の中には、外にあまり出たくない人はいるし、施設で暮らしたい人もいるだろう。例えば、僕の祖母は寝たきりで車椅子生活、障害者手帳を取得している。彼女は外に出たくないといつも言っている。もし出たくないという人がいたら、君はどうするの?出たくないと言っている人を無理矢理外に出していくのはよくないと僕は思っている」

僕は反論しました。
「いや、そうじゃないです。無理矢理外に出していくのではありません。あくまで選択肢をつくり、選択は1人ひとりに委ねるのです。「好きなアーティストのライブを見たい」「生まれ育ったところで、1人暮らしがしたい」という意思表示がある障害者がいたら、その思いをすぐに実行できる環境をつくっていく、という意味でサポネの活動を紹介しました。だから、障害者が暮らしやすい地域に=障害者が必ずしも積極的に地域に関わらなければいけない、ということではない。1人ひとり違う。みんな違ってみんないい。色んな人が共生し、1人ひとりの「らしさ」が表現できる社会にしたいです」

このようなディスカッションを繰り返し、僕は障害福祉を発信し、面接官は障害福祉を理解しました。障害福祉に関わる人に法人の説明をすると、理解をすぐ示していただくことが多くありました。おそらく障害福祉に対し、ある程度の知識や経験があるからだと思います。しかし、今回のように異業種の人には伝わりません。抽象的に説明するのではなく、きちんと伝えなければいけません。

分かりやすい言葉で、きちんと順路立ててロジックに説得力のある文章で伝えなければいけない。そうしないと、理解を得ることはできない。そう実感した出来事でした。

福祉職に対して発信し、福祉職だけで集まることは大切ですが、異業種に対して発信し、異業種のなかに福祉職が飛び込むことも同じくらい大切です。介護や福祉に携わる1人ひとりが「発信」という武器を身に付けていき、外部に発信をしていくことで、介護や福祉のイメージを変えていけるでしょう。「井の中の蛙になってはいけない。もっと福祉の外側に発信しなければいけない」 ぼくは実践し続けます。

第8回「思いやりが"できない"を”できる”に変えていく」

ども、Sekoです。

第7回「サービス化以前の思いやり」 の続きです。

 

脳性マヒの人と一緒に行った東京旅行ではハプニングがあり、楽しみにしていたライブが見れなくなるかもしれませんでした。そのピンチを救ってくれたのは…。今回は「サービス化以前の思いやり」を感じた体験談を紹介します。

数年前、電動車イスに乗る脳性マヒの人と一緒に、日本を代表するフォークシンガー友部正人のライブを観に、東京へ行きました。会場となるライブハウスに「こういう障害があり、電動車イスに乗っているが、入店可能でしょうか」と事前に連絡を入れ、入店可能と確認をしていました。しかし、ライブハウスへ到着してみると、ライブハウスはバリアフル。ライブハウスに入るには、急勾配な数十段の階段を下りなければいけません。エレベーターはない。彼は怒りを通り越したあきれた表情を浮かべながら、事前に入店可能と確認した旨をスタッフに説明しました。

「僕らが持ち上げるから車イスでも入れますよ。だから入店可能と電話で伝えました」とスタッフは返答し、総重量300kgに達する電動車イスに乗った彼をスタッフ6人掛かりで持ち上げ、1段1段ゆっくりと階段を下り、無事にライブハウスに入ることができました。

東京までライブを観に行ったのにライブを見ることができないというピンチを救ってくれたのは、ライブハウススタッフの「サービス化以前の思いやり」でした。


ライブハウスに入ってからも、車イススペースを作ってくれたり、ドリンクを頼んだら「ストローいるよね」と言ってくれたり、「彼にはどういうことに配慮したらいいのか」と想像し、その配慮が必要と決めつけて提供するのではなく、その配慮が必要かどうかを提案してくれました。でも障害があるからといって、普通のサービスが享受できるようにする配慮以外は特別なサービスはなく、特別な客として接するのではなく、あくまでも普通の客として接してくれました。

彼らの意識のなかに福祉の考えが無意識に溶け込んでいました。サービスを受けている側が福祉っぽさを感じないくらい、彼らはごく自然にサービスのなかに福祉を取り入れていました。福祉が自然に溶け込んでいるサービスこそ「サービス化以前の思いやり」ではないでしょうか。

ライブを見るようにするには何をしたらいいのか/黒板が見えるようにするにはどうしたらいいのかを想像し、提案。そして提供。車イスを持ち上げ、階段を降りたからライブを見ることができた/黒板が見える位置に席を移動したから黒板の文字が見ることができた。

障害があるからできないだろうと考えることは、社会が障害をつくっていると置き換えることができます。その考えをぶち壊すのが「サービス化以前の思いやり」。障害があるから「できない」を障害があっても「できる」に変えていくべきで、社会が障害をつくるのではなく、社会が障害をなくす存在に変化していかなければいけません。私たち1人ひとりが「サービス化以前の思いやり」を持つことが、その変化をもたらすきっかけとなるでしょう。

第7回「サービス化以前の思いやり」

僕は医療福祉トークイベント「WellCON」を企画しています。今回は10月に開催したそのイベントで感じたことを書きます。

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「障害があっても学びたいことが学べる」ように障害学生をサポートするサービスを立ち上げ、展開している人をゲストに迎え、主力サービスである「要約筆記者派遣」を中心に、新しく事業を立ち上げ、展開していくしんどさや苦悩、嬉しさややりがいをありのままに伝えるようなトークを展開しました。

 

ゲストトークを終えた後、参加者数人からゲストに対して質問がありましたが、1つの質問に違和感を覚えました。質問者は、中学生の車椅子ユーザー。彼は「学校の授業で、黒板の文字が見えない。これを解消するサービスはありませんか」と質問しました。僕は頭の中が「?」でいっぱいになりました。

 

まず、黒板が見えないのであれば、見えない理由を考え、見えない理由を解消するために環境を変えたり、整えたりし、黒板が見えるようにします。これらを行い、学べる環境をつくることで、授業に参加している状態になっていると「はじめて」捉えることができます。

 

例えば、耳が聞こえない学生は、先生が何を話しているのか分かりません。このバリアを解消する1つの手段が「要約筆記」。要約筆記を使用することで、先生が何を話しているのかを文字として伝わり、授業に参加できることができます。目が見えない学生は、教科書を読むことができません。このバリアを解消する1つの手段が「点字の教科書」。点字の教科書を使用することで、教科書を読むことができ、授業に参加することができます。

 

例にも挙げた通り、「できない」を「できる」に変える環境をつくり、環境を維持していくのにヒトやモノが必要である場合、サービスやプロダクトが生まれます。しかし、中学生の彼が伝えてくれた質問の内容はサービス化以前の段階です。学校の先生や友達が彼のことを考え、「見えない」をつくってしまっているバリアに向き合い、どのようなことに配慮したらバリアを解消し、黒板の文字が見えることができるかを考え、そのアイディアを実行すれば、彼が困っている「黒板の文字が見えない」を「黒板の文字が見える」に変え、授業に参加することができます。例えば、彼が座る席を前にしたり、見える位置にしたりし、文字が見えるよう配慮したら、バリアはすぐに解消し、彼は問題なく授業に参加することができます。

 

今回はサービス化以前の思いやりの段階です。サービスにする事象ではなく、少しの思いやりが解消できることです。