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セコライフ! - 障害福祉と音楽と何かと -

障害福祉の業界で働くぼくが考える医療福祉論から仕事の枠を超えた活動や好きな音楽まで幅広く発信。

第2回「あたりまえの生活をサポートする」

おはようございます!Sekoです。

大学卒業から障害福祉の業界に入り、もうすぐ8年目になります。

 

「ヘルパー」という言葉を聞いて、みなさんはどのようなことを想像しますか? 

料理を作る人、掃除をする人、食事介助をする人、入浴介助をする人、トイレの世話をする人… いわゆる身の回りの世話をする人のイメージを抱く人が多いと思います。

 

これらのイメージはほとんど正解です。ヘルパーの業務は、食事や入浴の介助などを行う「身体介護」、掃除や食事作りなどを行う「生活援助」、利用者の望む生活を一緒に考えて創っていく「相談・助言」の3つで、総称して「ホームヘルプサービス」と呼ばれています。

 

さて、僕の所属している障害者支援のNPO法人は、大きく分けて2つのことを行っています。1つは「障害者の生活支援」で、ヘルパー派遣とデイサービスを行い、障害者の生活を直接的に支えること。もう1つは「障害者と地域をつなげること」で、イベントや学習会、宅幼老所やカフェを行い、支える人を増やし、育てて、障害者の生活を間接的に支えています。

障害者ヘルパーは前述のホームヘルプサービスに加えて、次の2つの特徴があります。それは「長時間のサービスがあること」と「外出のサービスがあること(=ガイドヘルプサービス)」です。

入浴介助や短時間の家事などのピンポイントのサービスだけでなく、家事や、見守り、生活全般の介助や買い物や遊びに行く外出サービスもあり、どんな障害をもっていても、「あたりまえの生活」を過ごせるようにサポートを行います。

「あたりまえの生活」の生活とは、生命維持×社会活動のこと。

「生」はご飯を食べる、排泄する、就寝するなどの「生命維持」。「活」は遊びに行く、仕事をする、飲みに行くなどの「社会活動」という意味で、「生命維持」も「社会活動」もサポートすることが障害者ヘルパーの大切な目的の1つです。どちらの要素も満たされることで、あたりまえの生活を過ごしているといえると思います。

 

僕は、20代後半のある男性の外出サービスに3年以上入っています。彼は軽度の知的障害者アスペルガー症候群のため、複雑ではない文章でのコミュニケーションを取ることができますが、相手とコミュニケーションを取ること、特に「意思を伝えること」が苦手です。

彼のサポートに入り始めた頃は、外出先をいくつか提案しても「どこでもいい」と投げやりな返答で、外出もあまり楽しそうではありませんでした。

どうにかして彼に意思を持ってもらいたいと思い、まずはとことん彼と話すことにしました。何度か話す場を設けるうちに、彼はお酒が好きなことが分かり、「じゃあ今度、一緒に居酒屋に行きましょう」と提案すると、少し笑顔で「はい」と答えました。

 

1週間後、彼と居酒屋へ行き、仕事や趣味、悩んでいることや嬉しかったことなど色々とお話しました。彼は少しずつ意思を伝えるようになってきましたが、まだ僕からの質問に応じるかたちとして意思を伝えているだけで、彼からの発信での意思は聞いたことがありませんでした。

彼と居酒屋へ行くようになってから数ヶ月が経ったある日、彼が言いました。

オクトーバーフェストに行って、ドイツのビールを飲みたい」。

僕は「初めて自発的に意思を伝えてくれた!」と嬉しく思い、すぐに予定を調整し、彼とオクトーバーフェストへ行きました。

この日以来、彼が自発的に意思を伝えてくれることが多くなり、彼らしい生活を彼と一緒に創ることができました。

 

他者の生活に入り込み、生活全般のサポートをすることの大変さやコミュニケーションの難しさはありますが、その人の生活がその人らしく変わっていく嬉しさや、その人の行動や経験を疑似体験できる面白さ、自分とその人の考えの違いに触れる驚きを得ることができる仕事。それが、「ヘルパー」という仕事なのだと思います。

(過去に寄稿したコラムを修正した文章を載せています)